韓国論考

1887年3月6日の景福宮の灯火をもう一度灯す日を夢見て!

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(6/6)韓国が数々の奇跡を成し遂げてきた力を

結論として私が主張したいのは、本来、アジアの近代化は、日本ではなく韓国が中心となっているべきだったということである。韓国はそのために、朝鮮時代末期に高度な道義主義を身につけた儒教者たちが、進んでキリスト教精神を学び、「近代精神」の受け皿をつくっていった。日本は日本で、その合理主義的価値観をもって多くの近代用語の翻訳を行い、アジアの「近代制度」確立に大きく貢献したが、日本の役割としてはそれで充分であったのだ。

歴史に「IF」はないとはいうが、もしその時、高宗・韓国の「信義と愛」の精神からアジアの近代化が始まっていくような道があったとするならば、その後のアジアの歴史、東洋と西洋をつなぐ関係の橋は、今とはまったく違ったものになっていただろう。それは単なる空想ではなく、実際に現在、プロテスタント・キリスト教国家群である連合国を中心とした、国連による世界平和の理想が世界をリードしていることからも、すでに証明されている。

近代化の過程において、朱子学道徳主義からキリスト教道義主義を受け入れていった韓国が、もしもその精神をもって主導していれば、アジア諸国は欧米に対する反逆の道を行かずにすんだし、それによる多くの犠牲と、何より日本人自身の多くの生命も犠牲になることがなく、広島と長崎に原爆が落とされることもあり得なかった。そして朝鮮半島における数知れない犠牲と、現在の南北分断の悲劇もあり得なかったのである。

何よりもそうなれば、アジアに渡された橋は、日本からの「技術力と制度」のそれではなく、はたまた現在のような中国の強大なパワーのそれではない、韓国からの「信義と愛」の橋となって西洋世界に通じ、もっと早く全世界を平和の理想へと導いていたことだろう。

しかし、日本のその蛮行によって世界は多くの犠牲を払ってしまった。その歴史は決して繰り返されてはいけない。そのためには、今一度、アジアの姿を元に戻し、朝鮮半島の統一を成し遂げるとともに、元来の姿に戻った統一韓国が、自らその文化的価値と役割を自覚しながら、主体的な道義国家としての位相を選択しなければならない。

この不条理な世界にあって、しかし、たしかに人類の理想は一歩一歩実現に向かい、それによって一人ひとりの良心が目覚めている。実際に表面的には完全に弱肉強食の力の時代であった、あの荒廃した時代にあっても、韓国は、自らの道義主義のコードによって「信義と愛」の外交関係を切り開いていった。韓国人が持つこの道義主義的理想の力は、この国が数々の奇跡を成し遂げてきた原動力でもある。今またアジアに新しい希望の橋を渡し、平和の道を開いていくその出発点として、その人類の正義と理想に対する信頼の力が必要とされている。

1884年、日本で初めて電灯が灯ったのは、東京日本橋にある内閣印刷局であった。韓国も同じ年にエジソンランプ会社と契約していたが、実際に灯したのはその3年後の1887年3/6、景福宮内のことであった。高宗は翌年そこに立派な時計塔を冠した2階建ての洋館「観文閣」を建設し、中国式レンガを使った中国風「集玉齋」もそこに移転した。韓国の王宮内で、韓国式、西洋式、中国式が調和する中で灯った電灯。それこそがアジアに灯った真の平和主義による近代化精神の灯火であったと信じてやまない。今一度、その灯火を灯す希望の日が待たれる時である。

<了>

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武藤克精

日韓比較文化学専門家/ 文化交流コーディネーター/ 日韓未来ハートタンク代表/ サムスン人力開発院講師/ 『サランヘヨ・ハングンマル』編集長
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