韓国論考

1887年3月6日の景福宮の灯火をもう一度灯す日を夢見て!

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(5/6)「ハヌル」という言葉が存在しない日本

ここで私の専門である日韓の比較文化論を一つだけ紹介するならば、韓国にある固有語の「ハヌル」という言葉は、日本には存在していない。日本の固有語である「ソラ」という言葉は、空虚なあの青い空間を表しているに過ぎず、韓国語の「ハヌル」が持っている宇宙の道義的中心者であり、主宰者としての意味はない。後から江戸時代に入って、日本も韓国の儒教者たちから朱子学を学んだ時に、「天」という概念は入ってきたが、「天」は所詮、中国語に過ぎず、外来思想としていまだに日本人の観念の中には定着していない。(いっぽうで、韓国にはない日本の固有語は、「カミ」という言葉である)

これは両国の宗教観の根本的違いを決定付けており、韓国では常に人間を超越した「ハヌル」の存在が、すべての人の価値判断を決めている。どんな主張を持とうと、たとえ市場におけるオジサン同士の喧嘩であったとしても、韓国人はその場で自らの「天の道理」を主張しているのである。いっぽう、日本人が常に価値判断の基準とするのは、「空気」という言葉で表現される集団の雰囲気的調和であり、「世間」を支配する社会的同調圧力のほうである。

それによって日本人は、自体内ではその「和」を絶対視して争いを好まない。日本人は誰も、韓国人のように主体的に「アラソ(自分で判断してという意味の韓国語)」することもなく、皆、規則に忠実に従い、上の人と周りの人に合わせて、決して他人に迷惑をかけない。それが日本人の美徳であり、日本という国の内部においては理想的な調和を誇っているのも事実だが、しかしそこに個人の道義的主体性や、ましてや世界を導いていくことができるような思想は存在していないし、これまでも存在したことがない。

かつての第二次世界大戦において、日本が唱えた「五族協和」だ、「八紘一宇」だ、「四海同胞」だという言葉も、すべての民族が日本人と同じように、「天の道理」などというわけの分からないものではない、目に見える「現人神」である日本の天皇陛下を崇拝して、無条件、「大きな和」の中に入ろうという、実に迷惑な主張であった。周辺の国家はどこも皆、そんな主張よりは「天の道理」のほうを好む人々ばかりであったので、日本はやむを得ず、武力でそれを強要しなければならなかったし、それでも駄目なら、その国の悠久なる文化自体を根こそぎ抹殺してしまうしかなかったのである。

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武藤克精

日韓比較文化学専門家/ 文化交流コーディネーター/ 日韓未来ハートタンク代表/ サムスン人力開発院講師/ 『サランヘヨ・ハングンマル』編集長
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