活動紹介

異国の地で頑張る在韓日本婦人の皆さんにお会いしました!

今回で5回目になる「多文化家族支援センター」主催の講義です。

昨日は、今回で5回目になりますが、ひさびさにソウル首都圏在住の日本人婦人の方々に講義をすることができました。「健康家庭・多文化家族支援センター」主催の「多文化家族二重言語環境造成事業」プロジェクト、「韓国定着のための移住女性教育~一つ屋根の下、二つの文化~」という企画ですね。

これまで日韓の文化の違いや韓国語の心情世界、日韓の文化交流史などについてお話してきましたが、今回は文化の違いからさらに踏み込んで、韓国の伝統家庭文化と家族となっていくための勝利の秘訣を2コマ、2時間にわたってお話しさせていただきました。

文化の違いを基本として復習し、韓国の結婚文化、家族関係、姑との関係、他の嫁ぎ先の家族との関係、近所づきあいなどを話した上で、そこにおいて育児における利点や韓国人の生活意識の構造を理解することで、韓国生活がより豊かなものとなり、喜びが増えるという話をさせていただきました。

終わった後に質疑応答をしましたが、いろいろな悩みを打ち明けてくださるとともに、私自身がすごいなあと感動するような話もありましたね。以下はその質問と、あくまでも私の意見としてお伝えした答えです。

●家族を自慢し合って互いの価値高める韓国

あるお母さんは、公園で子供さんと遊んでいると、たまたまそこで子供を遊ばせているお母さんが、そこにいるみんなの分のアイスを買ってきてしまう、というようなことがよくある。自分なら「もしかしてアイスが食べたくない人もいるかもしれない」と思って遠慮してしまうが、私だけ気が利かない人になってしまっているのだろうか、韓国人はそういう遠慮の思いにはならないのか、というご質問でした。

それは文化の違いとして、私たちが「他人の口は他人の口だ」と考えているのとは違って、韓国人が「他人の口も自分の口だ」と考えているためです。だから、自分が食べたい時には近くの口もみんな「自分の口」なので、そこには「遠慮」などあり得ません。基本が「人間=家族」の文化であるがゆえであり、誰かが食べる時には(たとえ食べたくなくても)一緒に食べる、というのが家族の思考なので、当然「ありがた迷惑」という発想もありません。

それと関連して、韓国人と一緒にご飯を食べると、お金を払ってくれる速度が速くて、必ずご馳走されることになるので困るのだがどうしたらいいか、という質問。それから別の方の、一回しか会わない人におごられるとお返しすることができないので割り勘にしたいのにどうしたらいいか、という質問もありました。それも韓国人は「他人の口も自分の口だ」と考えているので特に負担を感じる必要はないといいました。もちろん、どうしても負担なら、食後のコーヒーやデザートをご馳走するか、買って渡してあげたらいいという話をしましたが。

それから講義の中で、家庭が価値の中心である韓国では、すべての人が自らの家族自慢をすることで、互いにその根源の価値を高めることに喜びを感じるのだ、という文化の違いを紹介しました。それに対して、これは質問ではなくて、実際に韓国で長く住んだ知り合いの日本婦人が、日本に帰った後に、韓国での習慣としてブログに子供自慢を思い切り書いていたら、それを見た日本の読者から批判が集中して、「自分の何がおかしいんだ」、「韓国に帰りたい」といって悩んでいるという報告もありましたね。それが日韓の文化の違いなのだということを教えてあげるしかないですよね。

●「言葉」ではなく「情」に従うコミュニケーション

あと、姑とのコミュニケーションとして、儒教文化の韓国の舅姑は「愛の主体」の位置にいるという自覚から、必ず「愛の言葉」を話すが、受けるほうもそれが「愛の言葉」であると分かっているので、その言葉のままには従わず、その愛の言葉を受けたお返しとして孝行の行動を取るのがふつうだ。すなわち、韓国の嫁は、姑の「言葉」ではなく姑の「情」に対応して、結果的に言葉に反することをすることが多くなる、という話をしました。

でも当然、私たち日本人は、言葉を中心にコミュニケーションするしか道がないので、それが分からない段階では、何でもいいから自分が「善意」だと思うことは、躊躇せずに押し切ってやってあげて、どうなるか結果をみたらいいというアドバイスをしました。

それに対して、ある方は、先日も家族の洗濯物を取り込んだ時に、姑が「私のは自分でたたむから置いておいていいよ」といったのでそのまま置いておいたのだが、その場合もたたんだほうがよかったのか、という質問をくださいました。迷う思いがあったのなら、とりあえずは押し切ってやってあげるのがいい、そうするうちに実際に何を願っているのか、姑の「情」のほうが分かるようになるので、その後はその「情」のほうに対応したらいいという話をしました。

もっといろいろありましたが、最後に一つだけご紹介すると、ある若いお母さんは男の子ばかりの子だくさんらしいのですが、子供がよく近くのおばあちゃんの家に行ってはご飯を食べて帰ってくるのだそうです。そういう時にも甘えていないで手伝いに行くべきなのかという質問でした。講義の中でもいいましたが、韓国は3代が一緒に育てるのが基本なので、孫にご飯を食べさせるのはおばあちゃんとして当然のことをしているだけであり、それが喜びなので、ぜんぜん大丈夫だという話をしました。

その上で、私のほうから逆に、「そのような場合、子供が親よりも祖父母のほうになつく、ということがけっこう韓国ではよくあるのだが、そうなっても複雑な思いにはならないのか」という質問をしたのですが、「ぜんぜんそんな気持ちにはならない」のだそうです。大家族の経験がないと、そう簡単に受け入れられなかったりするものですが、すっかり適応していらっしゃいます。思わず、「立派ですね」と称えてしまいました。

皆さん、特に難しい家庭生活における文化の違いも、本当に前向きに乗り越えていこうとされていて感動しました。韓国では「百年のお客」といわれて、特に大事にされっぱなしの「婿」である私としては、ひたすら頭が下がる思いでしたよね。

↑今回も皆さん、とても真剣に聞いてくださいました。

とっても特殊な内容でありながら実は韓国文化の中心はここにありますよね。

語ることが多くていつになく早口になっていたと思います。お疲れ様でした。

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武藤克精

日韓比較文化学専門家/ 文化交流コーディネーター/ 日韓未来ハートタンク代表/ サムスン人力開発院講師/ 『サランヘヨ・ハングンマル』編集長

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