(3/6)弱肉強食の世界に道義主義の理想を見抜いた
たしかに、日本が当時の世界を弱肉強食の世界だとみたその観点も、いっぽうでは間違ってはいないだろう。しかし、日本はそれを出発点としたために、その中で生き残るためにひたすら富国強兵の道に進み、自国を守るといういいわけのもとに半島を支配し、またその領土を守るといういいわけのもとに大陸に侵出した。
それに対して韓国は、世界が一見、弱肉強食の様相を呈しており、その中で強国に囲まれている自国がなんら頼む所がない弱小国家であることを知りながらも、しかし実際には、そのキリスト教精神に基礎付けられた西洋世界の最も高い上位価値である「天の道義」を見抜くことができたのである。
本来、「国際法」とは何か。1648年、ヨーロッパにおいて、カトリックとプロテスタントの、30年にわたる宗教戦争を終わらせたヴェストファーレン条約が、「近代国際法の元祖」であったとされている。すなわち当時、神の下の平等を唱える宗教改革の精神によって、「神聖ローマ帝国」の教皇・皇帝といった超国家的権力は否定され、各国が対等な主権を有するという「国際秩序」が初めて可能になった。この時、カトリックに勝利したプロテスタントの精神こそ、自然法思想による「万国公法(国際法)」の出発だったのである。
その後、全世界は、まさにその「天の道義」と「力の論理」とがぶつかり合って覇者を決めようと戦い合ったのであり、結果として二つの大戦を経て、プロテスタント・キリスト教国家群である連合国側が勝利を収めることで、世界は「弱肉強食」の理念ではない、国際連合が掲げる「国際法」の理想によって一つになった。当然、韓国は時代を正しく見つめ、日本は見誤っていたといわざるを得ないだろう。
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武藤克精
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